2010/04/14

【Japan】小栗上野介の口癖


 木村直巳の天涯の武士―幕臣小栗上野介という漫画を読んで、非常に面白かったので、記録に残しておきたく感想文をblogに載せます。私が小栗上野介に興味を持ったのは、高校時代に柴田錬三郎のエッセイ(生きざま)で、勝海舟と小栗上野介を比べ、勝海舟は明治まで生き残り自己宣伝書(氷川清話、海舟座談)をせっせと書き上げたのに、小栗は最後まで幕臣として筋を通したとあり、そんな人もいるんだと思った程度でした。なぜなら、歴史の教科書に小栗上野介は出てこないから彼の名前すら知らなかったのです。勝てば官軍ということなのでしょうが、小栗のことを知れば知るほど、その先見性に驚かされます。現在の日本の製造業がグローバル競争に関われるベースになった横須賀造船所の建設、横須賀造船所の建設以前に勝海舟と共に渡米しワシントン海軍工廠で「ネジ」を拾い持ち帰っているのです。おそらくマイナスのネジだと思いますが、ネジや金型、鋳造技術は製造業のベーステクノロジーとなります。ちなみに本田宗一郎さんがプラスのネジをイタリア視察で持ち帰ったことで、ネジを締める工程が自動化ができ、日本の製造業の生産性が一気にアップしたと、藤沢武夫さんは語っています(経営に終りはない)。

 その他、小栗上野介は現在の日本の基礎になる多くの計画(反射炉・造船所・火薬製造所・大砲製作所などの建設、後の連合艦隊に通じる主要6港湾に六備連合艦隊構想、洋式軍制、外国馬の導入、鉱山開発、商社や商工会議所、外国語・造船の学校設立、新聞発行、電信事業、横浜~江戸間の鉄道、ガス灯、郵便局、株式簿記、休日・昇進・昇給などの近代雇用体制の構築、酒類等への課税などなど)を用意していました。それは後に明治政府により実行されますが、発想は小栗のものです。

 小栗の性格を表す口癖は、

父母が大病で望みがなくても、もしや治るかと医薬の手当を止めないのが子の心情だ

と、幕臣としての「生きざま」を貫き通した人です。

 今年のNHKドラマは龍馬伝。勝海舟も出演しますが、小栗上野介は出演するでしょうか。
 小栗は日本国の幕臣として筋の通った「生きざま」であったからこそ、勝は自分の立場を「徳川」と「外へ」模索せざるを得なかった。
 
 もう一度、日本の未来を見据えた「新時代の横須賀造船所」のようなものを、どこかに作るべきです。

 今年は群馬県高崎市の小栗上野介の墓のある東善寺に訪れるつもりです。